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2011年1月29日土曜日

民間債務と公的負担:アイルランドが知っておくべきこと

Nick Dearden and Tim Jones, Jubilee Debt Campaign

アイルランド議会は、EUとIMFによる数十億ユーロ規模の「救済」パッケージを可決させたが、格付け機関のムーディーズはアイルランドの深刻な景気後退が今後も続くという懸念を表明し、1日も待たずにアイルランドの金利は大幅に下落した。これは、IMFとEUの新たな融資が国民の借金をさらに増やすことになる中で、アイルランドの容赦のない緊縮・削減パッケージが、同国の経済・社会を恐らく一世代に渡って荒廃させることを考えれば、驚くにはあたらないだろう。

IMFとEUパッケージが利益を与えようとする金融市場というものによるアイルランドへの一連の懲罰は、アイルランドの人々の生活がこれまで以上に気まぐれな利益の追求に左右される、ということを示している。しかし、これは一方で債権者を満足させようという試みはうまくいかないということも意味する。アイルランドは状況が改善に向かえば債権者に立ち向かっていかなければならず、一連の危機の責任を社会全体に転化するのではなく、問題として追求することを明確に宣言しなければならない。

これまで途上国は、アイルランドやギリシャなどが現在直面している問題を経験してきた。IMFの基準に照らしても、アイルランドのパッケージは無作法なものだ。アイルランドの最低賃金は1ユーロ引き下げられ、その次の大幅な削減策によって、年金や年金負担軽減、社会保護、公的サービス、その他諸々が削減されることになっている。

ザンビアもまた、IMFの圧力の下に1980年代から90年代にかけて、極度の政府歳出削減を実行した国である。IMFはザンビアの歳出削減を成功事例として賞賛しているが、アフリカ南部の国々の債務は経済が萎縮するに連れ倍増した。

アイルランド経済もまた、「貿易と競争において残された規制を取り除く力強い行動」によって再構成されることになるが、それはつまり民営化と規制緩和ということである。民間セクターを重視すると言えど、民間セクターの失敗が今回の大失敗をもたらしたことを考えれば、そのことは状況が違えば滑稽と言えるかもしれない。規制を受けない民間セクターが目先の利益のために無法な借り入れをしたために、アイルランドの民間セクターの債務は2008年度の国家歳入の600%にまで膨れ上がっている

民間の無責任な行動が社会に押し付けられようとしており、その痛みは中間層や貧困層の大部分に及ぶことになる。経済専門家は、債権者との債務交渉の拒否は大きな間違いだと、これまでになくはっきりと述べている。マーティン・ウォルフはフィナンシャル・タイムズで、「アイルランドは銀行の信頼性の徹底的な再構築によって自国を救うべきだった。銀行の債務が単純に公的債務になるはずがない。当然ながら、債権者がそれに代わって責任を負わなければならない。」と述べている。

パッケージによって利益を受けるのは、主に、ヨーロッパの銀行とその他の債権者である。こうした民間投資家を損失から保護することが、救済策の全体的な論点である。確かに、イギリスがアイルランドに対して所有している債権は、70億ユーロ近くにのぼる、実質的にはイギリスの銀行に対する追加救済策ということであり、RBS(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)はアイルランド政府に40億ユーロを融資しており、さらにモーゲージを中心として、アイルランドの民間セクターに380億ユーロを融資している。

その代償として、今やアイルランドとギリシャは長きに渡る債務の奴隷となる危険な状態に置かれており、それを回避する唯一の方法は、これらの債務が再交渉され、削減されることである。アクション・フロム・アイルランド(Afri)が今週発表した論文において、アンディ・ストーレイはアイルランドがデフォルト(債務不履行)をした場合について述べ、その場合でも市場は今現在行っている以上の懲罰をアイルランドに与えることはないだろうと主張しており、またアイルランドは現在の緊縮パッケージによって回復するよりも、短期間の強い衝撃からの方がより早く回復するだろうと述べている。ストーレイは、エクアドルやその他の国で実施された債務監査をモデルとして、一般の国民が危機がどのようにして起こったのかをきちんと理解できるように債務監査を行うことが、最初のステップとして非常に重要であると述べている。

銀行はこの30年間において常に勝利を収めてきたわけではなく、現在多くの経済専門家がアイルランドやギリシャに勧めていることとちょうど同じことが2001年のアルゼンチンで起こっている。2001年のクリスマス・イブにアルゼンチンは、IMFの推進によって引き起こされた通貨の過剰な上昇のために債務不履行を起こした。国内から資本が逃げ出すのを防ぐために、通貨切り下げと資本統制を導入したところ、経済は即座に急速な回復を始めた。貧困層を支えるための公共福祉の給付は増大し、一方でIMFの許可なく設けた輸出・金融取引税によって政府の歳入は増加した。2005年、アルゼンチンは1ポンドの債務につき0.35ポンドを債権者に支払うことで合意に達した。

ノーベル賞受賞の経済学者ポール・クルーグマンはこのように述べる。「銀行家の罪を大衆になすりつけることは最も重い罪であり誤りであることを、深刻な状況に置かれた人々に気づかせることを考えるべきだ。」これまで繰り返されてきた債務危機から学ぶべき時がきた、と言えるだろう。政府は金融セクターの行動の責任を国民に無理やり取らせるようなことは止めなければならない。民間の投資家を緊縮財政による支出で救済すべきではない。国民は自らの権利、福祉、民主主義を犠牲にして、国際資本の親玉を喜ばせるようなことをすべきではない。政府も国民も無力ではない。債務監査や部分的な債務不履行、累進課税、資本規制などの組み合わせによって、自治と健全さを世界に取り戻すことができるだろう。

多くの人々が、ギリシャは巨額の債務を不履行にするしかないと、確信してきた。次はスペインが国際資本の絶対服従下に置かれるという噂が絶えず、最終的にはヨーロッパ全体を服従させるかもしれない。国際資本に立ち向かうことは緊急の課題である。
2011年1月5日
(翻訳:高丸正人)

原文:
http://www.eurodad.org/whatsnew/articles.aspx?id=4344

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