東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

ジュビリー九州は地震津波及び原発被害地域の一日も早い復興を願い、各運営委員も支援の取り組みを行っています。そのためジュビリー九州の活動が遅延しておりますが、皆様のご理解をいただければ幸いです。
一方で債務問題を巡る状況は先進国・途上国を問わず深刻化しており、他団体とも連携しながら情報発信を進めています。今後も引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

2011年11月21日月曜日

パキスタンを再び襲った大洪水


求められるクライメート・ジャスティス(気候正義)

2011年9月、パキスタンは再び大規模な洪水に襲われました。被災者は900万人に上り、死者446名、140万戸を超える家屋が破壊されたと見られています。多くの村が未だ水没したままであり、避難民が路上や高台に屋根だけのテントを張り、救援物資に頼って生き延びている状況です。人々が正に「路上に投げ出されて」いる状態です。



国際社会の関心は薄く

パキスタンは昨年の同じ時期にもモンスーン(季節風)による豪雨に見舞われ、国土を縦に貫くインダス川が氾濫、2000万人が被災しました。今年の9月に異常気象により降り続いた雨の量は、平年の10倍以上に上ります。

しかし、昨年の洪水の際には国際社会がある程度この問題に注目し、援助の申し出などもされてきたのに、今年の洪水に対しては非常に関心が薄くなっています。困ったことに、二度目ともなると国際メディアが余り関心を抱かないため、報道される量が減り、被害の実態が伝わりにくくなっているのです。また、洪水の押し寄せる水が必然的に貧しい人々が住む地域に流れ込んだために、パキスタン国内においても関心が薄くなってしまったのです。

オックスファムなどの国際NGOや政府による支援が行われているものの、水が引かないため、未だに被災者の65パーセントがキャンプに取り残されたままであると見られています。国連が呼びかけた270億円の支援金のうち、実際に集まったお金はその四分の一しかなく、その他のNGO等も十分な資金を集められない状況に陥っています。

大幅な資金不足により、このままでは冬季の支援が継続できず、被災者の食料や医療物資が尽きてしまうことが懸念されています。日本からもユニセフを通じて募金を行うことができます(http://www.unicef.or.jp/kinkyu/pakistan2/2011.htm )。

国際社会のあやふやな対応がパキスタンのガバナンス(統治能力)不足を招く

こうした状況にも関わらず、パキスタン政府は十分な援助ができずにいます。テロとの戦争の問題、EUやアメリカ同様に世界金融危機により国の財政が悪化し、パキスタンの政治は混乱状態にあります。そのため、IMFから融資を受けるべく交渉を続けてきたのですが、IMFが押し付ける条件(燃料等への補助金カット)を受け入れることができず、結局融資を断ってしまいました。しかし、パキスタンでは国際的な原油価格の高騰により燃料代が倍に跳ね上がり、停電が頻発し、国民生活や産業に大きな影響を与えています。

パキスタン政府にとって燃料等への補助金は譲れない条件であったことは、こうした国内状況を鑑みれば当然と言えます。政府に財政健全化を求めることは当然としても、洪水被災者への援助不足や、国際原油価格の現状を無視した融資条件提示など、国際社会の側の対応もちぐはぐで、パキスタン政府をより窮地に陥れているのです。

世界で広がる洪水被害と地球温暖化

洪水のニュースはパキスタンに留まらず、タイや中南米、ヨーロッパの一部にまで広がりました。台風が日本の紀伊半島を襲い、かつてない大規模な災害を引き起こしたことも記憶に新しいところです。こうした事態に直面し、誰しもが地球温暖化を想起したのではないでしょうか。しかしながら、温暖化の被害は圧倒的に途上国において深刻なものとなっているのです。

気候正義とは?

近年、気候正義(Climate justice)という概念が提唱されるようになってきています。2000年にハーグにおいて、COP6への提言として初めての気候正義サミットが開催されました。サミットでは「私たちは、気候変動は権利の問題であると強く主張する。気候変動は私たちの生活、子ども達、天然資源に影響を及ぼしている。これらの原因となる気候変動に反対し、問題提起を行い、持続可能な開発を実践するために、私たちは地域や国境を越えた協調体制を築き上げていく」と宣言されています。

気候正義の運動は市民レベルのものですが、農業や森林に生計を依存する人々、漁業者などの組織が加わり、南の側から国連に対し、より強力な温暖化対策を求める国際的運動に発展しつつあります。言うまでもなく、温暖化の原因となる二酸化炭素の主な排出者はアメリカや日本など先進国に住む私たちの側であり、日本で企業が行っている生産活動や私たちの生活スタイルを変えることで、南の国の人々と連携することができるのです。

高丸正人:ジュビリー九州運営委員

参考文献
Agencies say Pakistan flood aid 'drying up' 
http://www.aljazeera.com/news/asia/2011/11/201111951830700881.html 
The Emergency the World Forgot  - Newsweek Pakistan
http://www.newsweekpakistan.com/features/586
Climate Institute
http://www.climate.org/climatelab/Climate_Justice_Movements

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