東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

ジュビリー九州は地震津波及び原発被害地域の一日も早い復興を願い、各運営委員も支援の取り組みを行っています。そのためジュビリー九州の活動が遅延しておりますが、皆様のご理解をいただければ幸いです。
一方で債務問題を巡る状況は先進国・途上国を問わず深刻化しており、他団体とも連携しながら情報発信を進めています。今後も引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

2013年1月13日日曜日

世銀/IMF年次総会in東京2012

 10月9日から14日にかけて東京で世銀/IMF年次総会が開催された。会議の主要な関心事はもちろんEU債務危機であり、また日中の関係悪化のあおりを受けて中国の閣僚級不参加と言ったニュースばかりが取り上げられる中で閉幕した。

 参加した各国閣僚級の口から出てくる言葉の多くは金融の安定化について(日本の場合は円高)だったのだが、明らかな進展を見ることはなかった。また、国家債務(ソブリン債)危機は同様に長年多くの中低所得国を苦しめてきた問題であるが、依然としてIMF/世銀において南の声が反映されないまま、債務削減を目指すHIPCイニシアティヴ(アフリカ中南米を中心とした重債務貧困国に対し一定の条件を満たすと債務の帳消しを行う救済策)や貧困削減を目指したミレニアム開発目標の取り組みはひっそりと終わりに近づいている。




南北の不均衡、影響力を伸ばす新興国

 国際的NGOであるオックスファムのスポークスマンは、近年BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)によるIMFへの出資が増加しているにも関わらず、依然として従来の欧米先進国を中心とした体制の改革が進んでいないことに対し、

「新興国市場が変化のペースに大いに失望しているのはおかしなことではない。IMFの統治改革は余りに遅すぎる。新興国市場はIMFが必要とする武器(資金)を与えることで彼らの受け持ち分の仕事をやり通してきたのに、未だに会議において正当な席を与えられていない。今回の改革は小さすぎるし、遅すぎる」

と批判している。

 近年、IMFにおける途上国の発言力は増加しつつあるものの、南アフリカとナイジェリアの投票権はベルギーより小さく、ブラジルの投票権はイタリアよりも小さい、とオックスファムは指摘している。

HIPCを越えて

 東京では同時に、世銀と市民社会による複数のCSフォーラムが行われた。その一つとして、EURODAD、AFRODAD、Jubilee USA等の主催による「HIPCを越えて-公正で透明な債務処理メカニズムを目指して」と題したフォーラムが開催されている。

Eurodad(ヨーロッパのNGO50団体が共同して欧州債務や途上国債務問題、貧困削減に関する調査・提言を行う団体)のブリニドルセンは、「この数十年、あらゆるソブリン債危機は債務超過の危機としてではなく流動性の危機として扱われてきた。外国の貸し手に債務を返済させるために融資パッケージが利用されてきた。債務帳消しが遅れると、早期の帳消しよりもさらにコストが必要となる」と述べ、パリ・クラブなどに代わる中立な債務処理システムの構築を訴えた。

 ノルウェー開発省のホルマスは「HPICは成熟の段階にあるが、同時に多くのHIPC完了国が新たな債務のリスクに直面している。現在のHPICを越える新たなものが必要だ」と述べた上で、持続可能性の問題からではなく貸し付けの正当性によって債務帳消しの判断をすべきだと主張した。

 一方、ドイツ財務省のシュンクネクトは、債務法廷の設置は現状では各国の政治的合意を見つけることは難しいとし、ユーロ圏などの目下の債務問題の処理を重視する姿勢を訴えた。また、債務法廷に勝利したとしても、債務国が新たなリスク・プレミアムを抱え込む危険性を指摘し、債務法廷の効果を疑問視した。

 UNCTAD債務・開発部長のリーは、10月に国連総会において債務処理メカニズムおよび債務危機についての特別イベントがあり、債務問題を話し合う初めての独立したセッションイベントになると述べた。また、責任あるソブリン債貸借におけるUNCTAD原則(principles on promoting responsible sovereign lending and borrowing:UNCTADが定めた、貸し付け側、借り受け側双方に透明性と責任を求めるガイドライン)いう新しい進展もあったが、一方でIMFは依然として経済成長によって債務問題を解決することを目指しており、債務国は経済成長によってしか債務の重圧から逃れる方法がなく、多くの障害が残されていることを指摘した。

 AFRODAD(アフリカの債務問題について調査・提言を行っているNGO)のウィリアムは、現在のHIPCイニシアティヴでは貸し手と借り手の間の公正かつ透明性のある債務処理を行うことができず、そのペースも貸し手の側によって引き伸ばされ、更なる財政・人的コストを借り手の側に押し付けていると述べ、失われた10年は貸し手の側がソブリン債の問題をなかなか認めようとしてこなかったことによって引き起こされていると指摘した。また、HIPCイニシアティヴは中所得国を対象としておらず、これまでのようなシンジケートローンに代わる新たな仕組みを作り、重債務状態にある中所得国も対象にすべきであると主張した。

参考文献

HIGHLIGHTS-IMF, World Bank meetings in Tokyo
http://reut.rs/X2MGIF

World Bank-IMF annual meetings 2012
http://www.brettonwoodsproject.org/art-571245

Beyond HIPC - towards a fair and transparent debt workout mechanism
http://www.brettonwoodsproject.org/art-571389

G24 at the IMF-World Bank annual meeting
http://oxf.am/3oo

高丸正人(運営委員)  ジュビリー九州ニューズレター39号より

0 件のコメント:

コメントを投稿