東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

ジュビリー九州は地震津波及び原発被害地域の一日も早い復興を願い、各運営委員も支援の取り組みを行っています。そのためジュビリー九州の活動が遅延しておりますが、皆様のご理解をいただければ幸いです。
一方で債務問題を巡る状況は先進国・途上国を問わず深刻化しており、他団体とも連携しながら情報発信を進めています。今後も引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

途上国の債務問題って何だろう?

世界の貧しい国々は、豊かな国々に毎日約1億ドルものお金を支払っています。 こうしたことがどういうプロセスの元に行われているのか、またどうして止めるべきなのか、これから見ていきましょう。

質問をクリックして詳しい解説をご覧ください。 ここに述べられていない事柄についての質問は、イギリスのジュビリー債務キャンペーン事務局( info@jubileedebtcampaign.org.uk )もしくは、ジュビリー九州( jubilee.kyushu@gmail.com )にお寄せください。

1.私たちは、なぜ債務を放棄すべきなのですか?

債務は、その起源が不公正であり、また貧困を悪化させているからです。

2.貧しい国々の債務はどのくらいあるのですか?

最貧48カ国の合計で2220億ドル、128の貧困国では3兆4000億ドルの債務があります。

3.こうした債務はどうして作られたのですか?

貧しい国々の債務の多くは1970年代から累積しているもので、多くの場合は豊かな世界による無謀で身勝手な貸付によって増加しているものです

4.これまで債務は減っていないのですか?

そんなことはありません。 キャンペーンによって債務帳消しは現実のものとなってきています。ですが、債務危機は未だに残り続けています。

5.日本は貧しい国の債務を帳消ししていないのですか?

日本は円借款(貸付による援助)をODA(政府開発援助)政策の中心に据えてきたため、アジアを中心に途上国への最大の債権国となっています。

6.債務帳消しのために豊かな国々は何をすべきでしょうか?

債務帳消しを実現するためには、多くの有害かつ非民主的で不適切な状況を断ち切らなければなりません。

7.返済される債務はどこへ行くのですか?

貧しい国々が支払う債務は、世界銀行やIMF、その他の多国籍機関(これらはすべて豊かな国々に支配されています)、豊かな国々の政府や企業へ送られます。

8.政治腐敗のせいで債務帳消しが無意味になるのでは?

確かに、政治腐敗は場所によっては大きな問題です。しかし、債務帳消しによるお金で変えることができるのです。

9.今後、債務危機を避けるために私たちはどうすればいいのでしょうか?

私たちは、債務や貿易、援助、税金を含めた経済的公正を求めています。また将来に渡る責任ある融資を求めています。

10.私にできることは?

いっぱいあります! キャンペーンによって変えることができるのです。

1.私たちは、なぜ債務を放棄すべきなのですか?

債務は、その起源が不公正であり、また貧困を悪化させているからです。

私たちはすべての債務に反対しているわけではありません。どんな国でも信用貸付(やがて債務となります)に依存しています。ですが、私たちは不当もしくは「違法な」債務を終わらせるよう求めています。そのどちらも支払われるべきではありません。なぜなら、債務支払いは貧しい国々にとって過大な負担であり、「債務」と言われているものそれ自身が純粋に不当なものであるからです。

なぜなら、債務はその国では返済できないものであり、人々の基礎的ニーズに応えるものではないからです。例を挙げると、2005-06年のケニヤが債務支払いに充てた予算は水道、保健、農業、道路、交通、金融を合わせた額と同じでした。最近の研究において、「倫理的貧困ライン」である一人あたり一日3ドル以下の人々の負担を取り除き、国民の基礎的ニーズに応えられるようにするために、107の国が債務帳消しを必要とすることが示されています。

貸し出された債務には、貸し手が故意に独裁者や圧制的な政権に与えたものがあります。例えば、現在の南アフリカ政府は、現在の政権になってから220億ドルの債務を返済してきました。その債務はアパルトヘイト体制下に貸し出されたもので、その政権を支えてたものです。

また、貸し出された債務には、それが汚職によって盗まれることを貸し手が知っていたものもあります。例を挙げると、世界銀行はザイール(現在のコンゴ民主共和国)の元独裁者であるモブツ・セセ・セコに貸付を続けていました。さらには、IMFの代表は彼がお金を盗み、そのお金が戻ってくる「見込みはない」と発言したのです。。 プロジェクトに使われた債務は、貸し手の不適切な助言によるものであったり、それがまったく役に立たないものであったために失敗したのです。事例を挙げると、フィリピンのバターン原子力発電所は火山のふもとにある地震断層の上に建設され、一度も使われていません。それでも、フィリピンはこの発電所のためにアメリカに15億ドル以上の返済をしなければならず、国にとって最大の債務契約となっています。一方で、発電所を建設した会社はお金を儲けることができました。

債務問題は非常に高い利率と言った不公平な条件の元で生み出されたものです。貧困国の債務は外貨(通常はドル)で支払わなければいけませんが、そのために世界市場の金利変更の影響を受けやすいのです。貸付の条件によって、国が返済する債務は恐ろしいほど高額になり、最後には債務を何倍にもして返すことになる上、それでもなお最初に借りた以上の債務が残ってしまうのです。

適切なプロセスを経ずに債務が違法に契約されることもあります。例えば、アルゼンチンの軍事独裁政権は数多くの債務契約を結びましたが、それらは憲法に定められた議会の承認無しに結ばれたものであり、圧政を下支えしていたのです。

豊かな国々の政府は、債務が単に貧困の原因であるばかりでなく、配慮に欠けた怠慢で利己的な貸付の結果であることを認めるべきなのです。彼らは冷戦下において支持を取り付けるため、もしくは豊かな国々の企業の契約を保護するためにお金を貸したのであり、もはや貧しい人々にこのお金を返すよう要求すべきではないのです。こうした理由のために、私たちは彼らに債務を帳消しにするよう求めているのです。

2.貧しい国々の債務はどのくらいあるのですか?

最貧48カ国の合計で2220億ドル、128の貧困国では3兆4000億ドルの債務があります。

最貧国(年間平均所得が一人当たり935ドル以下の「低所得国」)対外債務の総額は、2007年で2220億ドルに上ります。2007年にこれらの国々は豊かな国々に対して未払の124億ドル以上の債務を支払いました(元本と利子の支払い)。これは一日当たり3400万ドルになる計算です。

全ての「途上国」に対する対外債務の合計は2007年で3.4兆ドルに上り、この1年間で途上国は債務の返済のために5400億ドルのお金を使ったのです。

最近の資料によると、2008年、2009年にいくつかの債務帳消しが行われましたが、とりわけ世界金融危機に対応するために新たな債務が生まれています。むしろ、最新の資料ではこの状況がますます深まりそうな状況になっています。

3.こうした債務はどうして作られたのですか?

貧しい国々の債務の多くは1970年代から累積しているもので、多くの場合は豊かな世界による無謀で身勝手な貸付によって増加しているものです。

1960年代と70年代に、貧しい国々は大量の貸付を受けました。豊かな国々の多くの銀行は(原油価格の上昇によって生まれた)多額の預入金を所有していました。銀行はそれを貸し付けることによって利益を上げる必要にせまられ、こぞって貧しい国々に貸し付けたのです。その一方で、多くの豊かな国々の政府は、彼らが冷戦下における潜在的な同盟国とみなしていた国々を熱心に支援していたので、そうした国が腐敗や圧政的な政治体制に支配されているにも関わらず、お金を貸し付けたのです。

このようにして北の先進国の政府や銀行は巨額の融資を行っていたのです。そのいくつかは有益な目的のために使われましたが、多くは単純に独裁者を助けただけであったり、汚職や貸し手のいい加減なアドバイスのために失敗したプロジェクトに使われました。

1970年代と80年代、石油危機による金利の急騰が起こり債務は膨れ上がりました。1980年代から現在まで、貧しい国々によって作られる多くの日用品(コーヒーや綿、ココア)の価格は再三にわたり大きく下落してきており、それらは大抵は豊かな国々のアドバイスが原因なのです。こうして貧しい国々では債務を支払うための通貨が不足するようになり、この悪循環が為替レートに影響を及ぼすことで、貧しい国の(大抵は米ドルのような外貨で借り受けた)債務がその国に対して実質ベースで大幅に増大することになったのです。その結果、多くの国々は今の政府もしくは以前の政治体制がそれまでに借りた額よりもはるかに多くのお金を返したにも関わらず、結局は非常に多額の債務を負うことになってしまったのです。

4.これまで債務は減っていないのですか?

そんなことはありません。キャンペーンによって債務帳消しは現実のものとなってきています。ですが、債務危機は未だに残り続けています。

これには、意図的に独裁者に与えられたり、役に立たないかもしくは破壊的なプロジェクトへの融資に対する「違法な」債務が含まれています。確かに、多くの帳消しの事例があることは事実です。債務キャンペーンが1990年代に実際に起こる前には、これは達成不可能な目標だと考えられていました。今やキャンペーンのおかげで様々な方法で帳消しが行われていますが、まだ終わったわけではありません。主要な債務帳消しの枠組みによってこれまでに880億ドルの債務が無くなりました。それらの枠組みとはこのようなものです。

重債務貧困国(HIPC)イニシアティヴ

これは、最貧国に対する主要な国際的債務救済枠組みです。債務負担に対しいくつかの重要な削減策を主導していますが、一方でHIPCは債権者によって運営されているものであり、非常にわずかな国々にしか開かれておらず、債務帳消しの必要性や正当性を適切に評価していない上に、有害な条件を加えた上で非常にわずかでゆっくりとした速さでしか実行されていません。HIPCにおいて、債務はその国の輸出に対する収入に基づいて「維持可能」と考えられるレベルにまで帳消しされますが、財源に対するその他の要求は考慮されず、債務それ自体が合法的なものであるかどうかも考慮されません。HIPCが1996年に開始されて以来、28カ国が持っていた490億ドル以上の債務が帳消しされてきました。その他にも7カ国が現在帳消しスキームを実行している最中であり、さらに5カ国が実行の資格を得ています。

多国間債務救済イニシアティヴ(MDRI)

MDRIは2005年のグレンイーグルズサミットにおいて、G8の更なる債務帳消し合意から生まれた枠組みです。この決定は「貧困を過去のものに」(MAKEPOVERTYHISTORY)やG-CAP(Global Call to Action Against Poverty)などの大規模な運動の圧力の結果生まれました。MDRIはすでにHIPCを受けた上に、その条件のすべてを満たした国にのみ適用されるものです。一度HIPCを完了させることによって、MDRIを通じて世界銀行やIMF、アフリカ開発基金、また最近では米州開発銀行から、もともとHIPCで合意された債務よりも大きな額の債務帳消しを受けることができます。これについては、例えばアジア開発銀行などに対して依然として債務を抱えている国々に対して不公平であるという指摘がキャンペーン側からされています。2010年初頭までに、MDRIによって28カ国が約450億ドルの帳消しを受けています。

パリ・クラブ

パリ・クラブは貧困国に対してお金を貸している豊かな国の政府が集まる「クラブ」です。このクラブは、支払いが困難になった貧困国に対して豊かな国々が共同で交渉する場となっています。クラブでは、これらの国々が直接貸し付けた債務のみが扱われ、世界銀行や民間の銀行が貸し付けている債務は含まれません。パリ・クラブはその不透明さで有名です。クラブに出向いてくる貧しい国々の財務大臣達は、明確なルールが無く豊かな国々が交渉を支配していることに不満を述べてきました。1994年以来、債務を帳消ししてきた一方で、しばしばパリ・クラブは純粋に債務の「繰り延べ」にしか同意してきませんでした(それはつまり、貧しい国々に長期に渡って支払いを行わせることを意味します)。HIPCを受ける国々はパリ・クラブによって債務を帳消しされます。2005年末に、パリ・クラブはナイジェリアの債務について180億ドルの帳消しに合意しましたが、そのためには120億ドルの未払い分を前もって支払わなければならないのです。

キャンペーンによる圧力のおかげで、債務は帳消しされてきましたし、政府は債務帳消しを真剣に捉えています。しかし、それは私達が求める完全で本来あるべき債務危機の解決に近づいていることを意味しているわけではありません。債務帳消しには全ての違法で支払い不可能な債務が含まれるべきなのです。

5、日本は貧しい国の債務を帳消ししていないのですか?

日本は円借款(貸付による援助)をODA(政府開発援助)政策の中心に据えてきたため、アジアを中心に途上国への最大の債権国となっています。

日本政府は「借りる援助の方が自助努力に繋がる」と常日頃表明しているので、途上国の債務問題について日本の市民に向けて積極的に広報しておらず、債務帳消しに関しても世界で後ろ向きな国のひとつです。

1978年UNCTAD・特別貿易開発理事会で、後発開発途上国やオイルショックの影響を受けた国など深刻な債務返済困難に直面する開発途上国に対する措置が決定されましたが(TDB決議)、これに対して日本政府は、一旦債務を返済した国に同額の無償(返済義務のない)援助を上げるという形で債務救済を行ってきました(債務救済無償)。

そして1999年のHIPCイニシアティブによる最貧国の債務帳消しに関しても、日本政府は実質的に債務帳消しと同じ効果があると主張して債務救済無償を適用しようとしました。

それに対して日本の債務帳消しキャンペーンは、「貧困国は一旦返済用の外貨を準備しなくてはならない」「債務救済無償は日本企業からの物品購入に使われる可能性(ひも付き援助になる可能性)が大きい」と文字通りの帳消しを行うように主張しました。2002年末、日本政府はこれまでの方針を撤回し、次年度(03年度)から債権を放棄する形での文字通りの債務帳消しに切り替えました。

これにより2003年度から09年度の間に日本政府が帳消しした債務は17兆128億1300万円に上ります。うちHIPCイニシアティブによるものが23カ国約5兆円、TDB決議対象国が13カ国約2兆円、その他、イラク債務、ナイジェリア債務、セルビア・モンテネグロ債務など、その時々のパリクラブでの帳消し決定によるものが約10兆円となっています。

課題としては

・最貧国の債務帳消し(HIPCによる債務帳消し)が、IMF・世界銀行の設定する条件をクリアして完了点に到達しないと帳消しされないのに、TDB対象国の債務は返済期限が来れば自動的に帳消しされるという"逆転現象"が起こってしまっている(1999年にHIPCとして認定された41カ国のうち、まだ23カ国の帳消ししか実現していない)

・債務問題の解決に公正で中立な国際的な仕組みがないために、最貧国の債務帳消しにはこれだけ長い年月と世界的なキャンペーンが必要であったのに、米国が主導したイラク債務帳消しはわずか1年で決定する(帳消し額もイラク債務帳消しは1件当たり8890億円)など、大国の地政学的都合で債務帳消しが行われている

また日本政府は、かつては一度債務帳消しをした国には円借款を出さない方針でしたが、経済界の圧力で円借款増額の方針に転換して後は、タンザニアやウガンダなど一旦、債務を帳消しした国にも円借款を出しており、債務によるこれらの国の再度の財政圧迫が懸念されます。

加えて、日本はIMF、世界銀行、アジア開発銀行、米州開発銀行などの国際金融機関に多額の出資を行っており内部で大きな決定権を握っています。日本は、最貧国がアジア開発銀行に対して抱える債務や、2010年1月の地震で大きな被害を受けたハイチがIMFに対して抱える債務など、国際金融機関が保有する債務の帳消しに対しても積極的役割を果たすべきです。

参考URL:
我が国の債務救済措置(公的債務免除額)(概算値)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/keitai/enshakan/saimuhouki.html
国際協力機構年報2009年度事業実績統計
http://www.jica.go.jp/about/report/2009/pdf/57.pdf

6.債務帳消しのために豊かな国々は何をすべきでしょうか?

債務帳消しを実現するためには、多くの有害かつ非民主的で不適切な状況を断ち切らなければなりません。

例えば貧しい国々は、債務削減を受けるためには公的支出を削減し基幹産業を民営化しなければならないと言われます。国際通貨基金(IMF)と世界銀行がこのような条件を押し付けています。

こうした条件はまったく非民主的なものです。それらの機関は、その国をどうやって運営するかの重要な決定を、政府や議会、人々の意思と無関係に決定し、代わりに責任を負わない外部の組織によって計画を強要しているのです。

また、こうしたことが貧しい国々、特に最も貧しい人々に深刻な被害を与えていることが明らかになってきています。独立系のエコノミスト達や国連開発計画のような組織がそうしたことを非難しています。

このことはまた、貧困国が貸し手によって設定された目標を達成しようともがいている間に今まさに求められている債務削減が何年も遅れてしまうことを意味しています。

私たちの債務国パートナーは、債務帳消しのために資金の責任ある透明な利用を保証する条件だけを求めています。ジュビリー債務キャンペーンは「債務の連鎖を断ち切ろうキャンペーン」を通じてそれ以外のすべての条件を廃止することを求めています。

7.返済される債務はどこへ行くのですか?

貧しい国々が支払う債務は、世界銀行やIMF、その他の多国籍機関(これらはすべて豊かな国々に支配されています)、豊かな国々の政府や企業へ送られます。

多国間債務

最貧国にとって、その債務の多くは「多国籍」機関から借りいれたものです。つまり、その機関とは多くの様々な国々によって所有され管理されているものです。特に、最貧国は世界銀行や国際通貨基金(IMF)、その他の地域開発銀行(アフリカ開発銀行もしくは米州開発銀行など)に対して債務を返済しています。IMFは非常に重要で、最大の債権者ではないものの、他の債権者達は債務帳消しに同意すべきか否かを決めるため、また新たな援助金交付や貸し付けをするためにIMFに注目しているのです。

二国間債務

二国間債務とは自分以外の他の一つ国によって貸し付けられた債務のことです。これには2つのタイプがあります。「援助債務」は貸し付けの形で与えられた援助のお金という形での債務です。しかし、ほとんどの二国間債務は「輸出信用債務」です。これは貸し付け国の企業によって供給されたプロジェクトや物資に対する債務であり、貸し付け国政府によって保証され、保険がかけられています。例えば、イギリス政府はイギリス企業によるエチオピアでの発電所建設に保証を与えました。もしエチオピアが債務の支払が困難になった場合、イギリス政府はその企業に保証金を支払い、エチオピアの債務から今度はイギリスの債務になるのです。イギリスの輸出信用債務の内のかなり大きな額が武器の売買に関係しています。多くの輸出信用取引が腐敗に陥っているのです。政府は、プロジェクトが関係する国にとって実行可能なものか、価値のあるものかどうかを評価するよりも自国の企業が確実に契約できるようにすることを考えがちです。

通商・民間債務

通商・民間債務とは民間の企業、銀行、個人によって貸し付けられている債務のことです。1980、90年代に、最貧国は商業債権者への返済のために世界銀行や豊かな政府から新たな融資を受けました。これによって事実上、通商債務から多国間・二国間債務に置き換えられたのです。多くの貧困国はその上に巨額の民間債務も抱えています。

国内債務

国内債務とは、その国が自国内の企業や銀行、個人から借りた債務のことです。これは「合計対外債務」には含まれず、国が債務削減や帳消しを必要とするかどうかを決定する際に考慮されません。しかし、これは非常に大きな問題です。ニカラグアやケニアと言った国々は非常に大きな国内債務を抱えています。これらの大部分は、国が対外債務を支払うために借り入れをしたために急激に増えたものです。今のところ、これらの債務は「持続可能」と判断されていますが、本当は債務が移転されているだけなのです。

8.政治腐敗のせいで債務帳消しが無意味になるのでは?

政治腐敗は場所によっては大きな問題です。しかし、債務帳消しによるお金で変えることができるのです。

多くの貧しい国々が現在に渡って政治腐敗の問題を抱えています。だからと言って、このことで債務帳消しの効果を失われることはありません。反対に、債務帳消しによるお金が必要とされるところに使われている事がいくつもの研究により示されてきました。あるアフリカ10カ国の研究では、債務削減のたった4年後には教育支出が40%増加し、保健医療の支出が70%増加したことが分かりました。IMFの経済学者が2006年に行った研究においても、貧困国の債務返済を削減することにより社会的支出の増加に「重要な」影響を与えていることが裏付けられているのです。

多くの国々でガバナンスが改善しており、こうした取り組みは支援を受けるべきです。しかし、度重なる債務返済の要求により、政府の組織は弱められ腐敗を悪化させているのです。

腐敗に対処することは、同時に過去の腐敗も是正されることを意味しています。債務国が不当で「違法な」債務を支払う必要がないことが認められなければなりません。その債務には豊かな国々が腐敗した政治家に与えた貸付金が含まれており、そのお金が盗まれてしまったことが分かっています。例えばザイール(現在のコンゴ民主共和国)やシエラレオネでは、豊かな国々の貸付金が政治腐敗や圧政を支えていました。その上、債権者たちはそうした政治体制に苦しんでいた人々に債務の支払を要求したのです。

債務帳消しによるお金が政治腐敗に悪用されることが決してないような仕組みを整えるべきです。債務国のキャンペーンはこのことを求めています。そのためには、貸し手と借り手の政府が貸し付けと債務帳消しに関するすべての情報を公開し、利用可能な状態にすることが必要です。政府がこのことを実現できない場合は、その代わりに債務の支払いを、例えばその国の人道的プロジェクトに振り向けたらよいでしょう。債務の返済とは、豊かな国々がお金を取り上げるためにあるのではないのです。

9.今後、債務危機を避けるために私たちはどうすればいいのでしょうか?

私たちは、債務や貿易、援助、税金を含めた経済的公正を求めています。また将来に渡る責任ある融資を求めています。

私たちはこれまで何十年にも渡って貧しい国々を破壊してきた債務危機を再び起こさないため、国際的な行動を起こすべきです。

これは、不当(違法)で支払不可能な債務の帳消しにより「白紙」の状態に戻した上で、債務国が債務漬けの状態にされないように、まずは公正な貿易ルール、公正な税システム、また融資ではなく無償の質の高い十分な量の援助が必要であることを求めるものです。

また、将来のあらゆる貸し付けが公平な条件の下で議会やメディア、市民によって吟味されるように、透明で開かれた方法により責任ある形で行われるべきであることも求められます。すべての不公正な条件による貸し付けに対して債権者の責任が認められるべきであり、将来的に帳消しされることが望ましいのです。

10.私にできることは?

いっぱいあります! キャンペーンによって変えることができるのです。

何年にも渡るキャンペーンの結果、これまで豊かな国々の政府が何度も拒否してきた債務帳消しが実現し、貧しい国々の多くの人々の力となってきました。市民の力、そして市民による監視は、とても大きなものなのです。あなたが送るすべての手紙や電子メール、あなたが参加するすべての行動、あなたが行うすべての話し合いが債務危機を変えることにつながるのです。


この文章の著作権の一部はJubilee Debt Campaign UKにあり、債務と貧困を考えるジュビリー九州が加筆・修正を加えたものです。原文は以下を参照下さい。

http://www.jubileedebtcampaign.org.uk/?lid=98