東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

ジュビリー九州は地震津波及び原発被害地域の一日も早い復興を願い、各運営委員も支援の取り組みを行っています。そのためジュビリー九州の活動が遅延しておりますが、皆様のご理解をいただければ幸いです。
一方で債務問題を巡る状況は先進国・途上国を問わず深刻化しており、他団体とも連携しながら情報発信を進めています。今後も引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

2012年11月5日月曜日

債務帳消し後の途上国に何が起こっているか?


 20125月にイギリスのジュビリー・デット・キャンペーンが「債務の現状」と題した冊子を発行しました。この中では、ジュビリーの活動がもたらした債務帳消しの効果と、2000年代に入り危機が再発する可能性が警告されています。


HIPCイニシアティヴによる債務帳消し

 1996年のHIPCイニシアティヴ、2005年のMDRIによって、主にアフリカ、中南米の32の重債務貧困国に対し、主に世銀とIMFが貸し付けていた債務の帳消しが実行されました。これらの国々では債務帳消しの結果、対外債務の支払いは1998年には政府歳入の20パーセントあったものが、2009年には5パーセント以下にまで減少しました。

一方で、HIPCイニシアティヴは貧困国に民営化などの条件を押し付けた上で実行されました。例えば、アフリカのマラウイ共和国では農産物の流通システムが民営化され、肥料などへの補助金がカットされました。その結果、2000年代前半には生産の落ち込みによる食料危機が発生し、政府は世銀の要求に反して補助金を復活させ農産物の生産量を回復させる、という事態が起こっています。

2011年、世銀とIMFHIPCイニシアティヴに新たな国を加えることはせず、このままイニシアティヴを終了させることを表明しています。フィリピンやエル・サルバドル、スリランカのように重債務状態にも関わらず中所得国に分類されイニシアティヴの対象にされなかった国々や、今後新たに危機が発生した場合に対する債務処理の枠組みは現状では存在しません。

途上国の脆弱性は以前のまま

一方、世界金融危機以降、途上国は輸出の伸び悩みや物価の不安定化によって対外借り入れ(民間および多国籍金融機関からの)を急増させており、世銀・IMFは2012年3月に発表したレポートで、68の中および低所得国のうち5カ国が部分的に債務不履行になっており、15カ国が支払い不能になる高いリスク、23カ国が中程度のリスク、25カ国が低いリスクに分類される、としています。

国際社会の役割

2006-2010年の間に低所得国が行った対外借り入れのうち45%は世銀とIMFからとなっており、依然として世銀・IMFの役割は大きい状態です。しかしこれらの機関は片側でバブルと収縮を繰り返す自由な資本移動を推進する立場にあり、資本移動に対する規制がなければ危機を再び繰り返すことになるとジュビー・キャンペーンは主張しています。

参考文献
Jubilee Debt Campaign, The state of debt, putting and end to 30 years of crisis

0 件のコメント:

コメントを投稿