東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

ジュビリー九州は地震津波及び原発被害地域の一日も早い復興を願い、各運営委員も支援の取り組みを行っています。そのためジュビリー九州の活動が遅延しておりますが、皆様のご理解をいただければ幸いです。
一方で債務問題を巡る状況は先進国・途上国を問わず深刻化しており、他団体とも連携しながら情報発信を進めています。今後も引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

2011年1月24日月曜日

パキスタン債務アップデート

1.洪水被害は混沌から抜け出せず

パキスタンの洪水被害後の状況はマスコミや支援活動団体などから情報が上がっているのですが、パキスタン国内でもじわじわと関心が薄れ、情報が少なくなり始めている様子です。また、パキスタン政府の情報収集能力にもかなり疑問が持たれており、海外のマスコミや支援団体からの情報もあらかじめ限られたものであるため、実態の正確な把握が非常に困難な状況にあります。

1月14日のパキスタンのThe News誌にパキスタン核技術者のA.Q.カーン氏のコラムが掲載されていますが、この中では国連の被害の見積もりは低すぎるし、パキスタン政府の見積もりは多き過ぎる、いずれにせよ実態把握が困難な状況にあることを憂慮しています。

After the floods

http://www.thenews.com.pk/TodaysPrintDetail.aspx?ID=25498&Cat=9&dt=1/14/2011

http://www.thenews.com.pk/TodaysPrintDetail.aspx?ID=25794&Cat=9&dt=1/15/2011

被害状況についてはアジア開発銀行・世銀・パキスタン政府よるレポート「Pakistan Floods 2010-Preliminary Damage and Needs Assessment」およびNGOなどによる「Civil Society’s Rapid Appraisal of Flood Damage and Need Assessment Process Being Led by the World Bank and the Asian Development Bank」というものが発行されているようです。

いずれのレポートも被害状況を把握するには不十分であり、特に被災者そのものへの視点が欠けているという批判をしています。また、世銀・アジア開発銀行のレポートで被害額100億ドルという数字は、インフレ率を考慮していないものであり、「リアルな数字は200億ドル」という指摘をしています。

一方、foreign policy 誌では、被災地域で肺炎、下痢、マラリア、ポリオなどの感染症被害が蔓延しており、医療支援がまったく追いついていない状況が報告されています。現在も大勢の人々が屋根のない場所で生活しており、深刻な食糧不足、飲料水の不足は改善されていません。また、PTSDに対する精神的な問題も深刻な状況にあり、しかしながら、そうした病気は他のものに比べ軽視されている、という問題点が指摘されています。

The mounting public health crisis in Pakistan http://afpak.foreignpolicy.com/posts/2011/01/14/the_mounting_public_health_crisis_in_pakistan

2.日本は5千万ドルを支援

日本政府は復興支援として国連開発計画(UNDP)を通じて5千万ドルの緊急支援を行いました。UNDPはこの支援金で、畜産の復興、公的サービスの再開、地域コミュニティのインフラ整備、早期警報システムの設置、女性、子どもをターゲットにしたメンタル面での支援、高齢者の支援などを行う予定です。

Japan gives US$50 million for Pakistan's flood-affected

http://www.reliefweb.int/rw/rwb.nsf/db900sid/EGUA-8D8TGF?OpenDocument

3.日本の円借款について合意

昨年、日本が災害支援として提示した5億ドルのうち、一部の事業についてパキスタン側と日本の外務省との間で合意しました。

パキスタン・イスラム共和国に対する円借款に関する書簡の交換

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/1/0121_03.html

円借款はパキスタン国民が借金として将来返済しなければならないもので、いわゆる経済発展のための援助とは異なる案件についても、借款という形を取ることが妥当と言えるかどうかについては、疑問と言えるのではないでしょうか。

4.「テロとの戦争」とパキスタン

1月14日に、パキスタンのザルダリ首相とアメリカのオバマ大統領がホワイトハウスで会談しています。

その中で、アメリカは災害復興への援助を約束する一方、アフガニスタンと国境を接する パキスタンに更なる戦争協力をもとめています。

Obama, Zardari Discuss Terrorism, Regional Security

http://www.voanews.com/english/news/asia/Security-Aid-Issues-Dominate-Obama-Zardari-Meeting--113605889.html

端的に言えば、「金に困ってるなら戦争で払え」という暴力的な圧力のかけかたであり、援助が戦争の道具にされている点で非常に問題のある行為だと言えます。

パキスタン政府は、2001年の同時多発テロ以来、自分たちのことを「テロとの戦争の最前線」という呼び方をしてきました。そのことによって国際社会の注目を浴びて、債務問題の処理や援助を引き出してきた、ということです。

しかし、戦争によってこれまで莫大な経済的損失や数千人に及ぶ死者を出すなど、その代償は決して小さなものではなく、結局のところ、この「最前線」の称号を返上したい、というのが本音のようです。

Pakistan not to call itself `frontline state' in terror war

http://www.hindustantimes.com/Pakistan-not-to-call-itself-frontline-state-in-terror-war/Article1-652885.aspx

パキスタンが戦争に向かうのは、アメリカやヨーロッパの都合によってそうさせられているのであって、本当ならば対話や経済発展を通じて問題の解決が図られるべきなのに、現実がそうなっていない、というパキスタンの苦しい心情が垣間見えます。

運営委員:高丸正人

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